「Azure Stack」正式出荷へ。Microsoft Azureと一貫性のあるクラウド機能をオンプレミスで利用可能に。競合他社に対するハイブリッドクラウドの差別化要因になるか

2017年7月14日

マイクロソフトは、オンプレミスでMicrosoft Azureと同じIaaS/PaaSの機能を実現する統合システム「Azure Stack」の受注開始を発表しました。出荷は9月になる予定。

Azure Stackはあらかじめサーバやストレージと専用のソフトウェアが組み合わされた統合システムとして、Dell EMC、HPE、Lenovoの3社から提供されます。

Azure Stackが実現するのは、一貫性あるハイブリッドクラウド

Azure Stackは、Microsoft Azureの基本的な機能である仮想マシンや仮想ネットワーク、BLOB/テーブルストレージ、Azure App Serviceなどの機能をオンプレミスで利用可能にするものです。2015年に開催されたイベント「Ignite 2015」ではじめて発表されました

このときには、Microsoft Azureの管理画面とAzure Stackの管理画面を両方表示してどちらも同じものであることを示し、オンプレミスでクラウドの機能を使えることがアピールされました。

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オンプレミスとクラウドでのアプリケーションの高度な相互運用性と、その実現によるハイブリッドクラウドの実現がAzure Stackのおもな狙いの1つといえます。

と同時に、Azure Stackを用いて情報部門が社内向けやグループ企業向けにプライベートクラウドを提供する、あるいはデータセンター事業者がサービスのひとつとしてAzure Stackを利用したクラウドサービスの提供を行うといったクラウド基盤としても利用されることが考えられます。

ただしマイクロソフトはAzure Stackの発表以来ずっと、Microsoft AzureとAzure Stackは(互換ではなく)機能に一貫性があり、同じ方法でアプリケーションが開発、運用できる、と説明してきています。

そしてこの一貫性とは互換性ではない。「相違はないが互換ではない。それが一貫性だ」(This is not different, this is not compatible, it's consistent)ともIgnite 2015のセッションで説明されています

それはAzure Stackが、Microsoft Azureそのものをオンプレミスで再現するものではなく、同じ機能を実現すべくオンプレミス用のハードウェアを用いた別の実装を行ったものだからだと考えられます。

マイクロソフトの強みがついに発揮できるか

パブリッククラウドとプライベートクラウドで基本的に同じ機能を提供することでシームレスなハイブリッドクラウドを実現するという戦略は、マイクロソフトがクラウド参入当初から描いていた強みでした。

しかし振り返ってみると、それはなかなか現実化しない強みでもありました。

マイクロソフトが初めてクラウド市場に参入したとき、そのクラウドの名称は「Windows Azure」であり、Windowsファミリーのひとつであることがその名前で示されてはいました。しかし当時のWindows Azureはその内部でWebロールやWorkerロールなどの独自のアーキテクチャを備え、仮想マシンのような分りやすい概念を持たなかったため、Windows Serverと一貫性のある使い勝手があるとはいいにくいものでした。

そこから数年後にMicrosoft Azureと名称を変更し、AWSを追撃すべくIaaSを強化し、一方でWindows Serverも同社がクラウドで得たノウハウを注入して開発を進めてきました。また、Windows ServerにAzureポータル機能をかぶせることでクラウド的な使い勝手を実現するAzure Packのようなソフトウェアも登場してきました。

そうした背景のなか、ようやくクラウドとオンプレミスで一貫性を持った機能を提供するAzure Stackが登場してきたわけです。

かつて、VMwareは仮想化ハイパーバーザーをベースにオンプレミスとクラウドの一貫性を実現しようとしましたが、残念ながらクラウドのメジャープレイヤーにはなれませんでした。

そして現時点でクラウドのメジャープレイヤーであるAWSやGoogle、IBM、マイクロソフトののなかで、マイクロソフトだけが唯一メジャーなサーバOSを提供するベンダであり、それを利用したハイブリッドクラウド製品を提供できる地位にあります。

そのマイクロソフトが満を持して提供するAzure Stackは、果たして、ハイブリッドクラウドにおける競合クラウドに対する大きなアドバンテージになるのでしょうか。注目したいと思います。

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カテゴリ クラウド
タグ  Microsoft Azure , ハイブリッドクラウド


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