オープンシステムの幼年期の終わり

2009年6月5日

オープンシステムはあまりに複雑になりすぎたのではないか、と最近思うようになりました。それがクラウドやSaaSへの注目の理由であり、そしてオラクルがサン・マイクロシステムズを買収する理由ではないかと考えています。

オープンシステムの功罪

約20年前、UNIXとリレーショナルデータベースとイーサネットの登場がオープンシステムの始まりでした。ハードウェアベンダを自由に選んでイーサネットで接続し、リレーショナルデータベースを選んでその上でシステムを構築できるようになり、顧客が自由にハードウェアとソフトウェアを組み合わせる時代がやってきました。

オープンシステムにも功罪両面があります。顧客がソフトウェアやハードウェアを自由に選べるようになった結果、ベンダの囲い込みから自由になり、システム構築の主導権を顧客が握れるようになりました。先進技術を取り入れやすくなり、また技術的にはある製品を別の製品で置き換えることが可能なため、ベンダ間の競争も激化しました。その結果、製品の進化が加速されました。

一方で、複数のベンダの製品を組み合わせて構築したシステムでは、トラブルが発生した場合の責任の所在があいまいになりました。顧客はトラブルが発生したとき、それがOSの動作不良か、ネットワークの不調なのか、アプリケーションのバグなのか、といった切り分けの責任を負うようになりました。また、システム構築時の組み合わせにさまざま製品の組み合わせが可能になった結果、本当に最適なシステムの組み合わせはどれなのか、自信を持って判断することが難しくなってきました。

このオープンシステムの功罪の「罪」の部分を、そろそろ多くの顧客が負いきれなくなってきている、あるいは顧客が負っていた「罪」の部分もベンダへと移管しようとしているように思えます。

複雑すぎる選択肢

5年前までは、オープンシステムの選択肢はそれほど複雑には思えませんでした(それでも十分に難しくはありましたが)。いくつかのUNIXベンダからハードウェアとOSを選び、あるいはIAサーバとWindows Serverを選び、主要なデータベースあるいは業務パッケージを選んで、その上にアプリケーションを実装する、というのが基本でした。能力の拡大には高速なサーバを導入するスケールアップで対応し、ストレージはサーバ内に内蔵されたハードディスク(DAS)を増強するのが主流でした。サーバの仮想化もまだ実用化されていませんでした。

しかしいまはどうでしょう。ブレードの登場で、スケールアウト型にするのかスケールアップ型にするのかを考える必要があります。ストレージはDASかSANか。仮想化レイヤはどのベンダか、OSはWindowsかUNIXか。

業務アプリケーションのパッケージも種類が増えましたが、それ以上に内部統制によってITでやるべきことが増えました。スクラッチからの開発がいいのか、パッケージのカスタマイズか。カスタマイズするとして、ベースにするのはERPか会計ソフトか、それともCRMがいいのか。

クライアントも多様化が進んでいます。PCかシンクライアントか。情報漏洩対策には何を導入するのか。ICカードか、暗号化ソフトか、単に持ち出し禁止か。社外からのリモートアクセスにはSSL-VPNなどで対応するのかどうか。

実際のところ、これだけの選択肢を組み合わせたシステムでもしもトラブルが発生したとしたら、その切り分けは時として困難なものになるのは容易に想像できます。トラブルが発生しなかったとしても、こうしたシステムを統合して運用管理していくために、高度な運用管理ツールがさらに必要なのかと考えると、もっとシンプルな方法はないものかと思わざるを得ません。

オープンシステムの幼年期は終わり

企業がITを採用するのは経営上の課題を解決するためのはずですが、そのITを運営管理することも課題として企業にのしかかっている、という現状は皮肉にも思えます。

いまクラウド、そしてSaaSが注目されてきているのは、この複雑さの大半をネットの向こう側に放り投げて、ベンダの責任としてまかせることができる、しかも短納期低コストで、という点が大きな魅力になっているからです。オープンシステムのメリットを享受してさまざまな技術を組み合わせて最適なシステムを構築し運用し、それをコアコンピータンスにできる顧客というのは、それによって負わざるを得ない複雑さも解決できる大きなIT部門をもつ顧客に、これからは限られていくのではないでしょうか。

エリソン氏が明言しているように、オラクルがサン・マイクロシステムズを買収してハードウェアとソフトウェアの両方を提供するベンダになるという明確な目標を持つのは、オープンシステムの良さを残しながらも1社ですべてを提供することで、複雑さという問題を取り除けるベンダになることを目指しているためです。

オラクルはクラウドやSaaSとは違うアプローチで、この課題を解決しようとしているのです。

となると、それ以外のベンダはどうなるのでしょうか? SaaSやクラウドでサービスや製品を提供せず、かといってワンストップでソリューションを提供しない立場のハードウェアやソフトウェアベンダ。オラクルやIBMやいくつかのベンダを除くと、残りのほとんどすべてのベンダが該当します。

これからこうしたベンダの激しい合従連衡がはじまるのではないでしょうか。

20年前、オープンシステムの時代に花開いた多種多様な製品群は、そのテクノロジは活かしつつも企業や製品という単位では整理と融合の時代に入っていくのでしょう。単にオープンであればよかった、という幼年期の時代から、これからはオープンでありつつも複雑さを解消し、あるいはほかの製品群と容易に統合可能なアーキテクチャに沿った方法で製品やサービスが提供される時代、これをなんと呼べばいいのかまだ分かりませんが、いまそういう時代へと明らかにシフトしているのだと僕は考えています。

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タグ : IT業界動向 , オープンシステム



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