ネットワーク機器の劇的な低価格化は進むか。マーチャントシリコンとソフトウェアによる仮想化

2012年8月6日

いまネットワーク市場は、ソフトウェアでネットワーク構成の制御を行うSoftware-Defined Networkとその標準技術であるOpenFlowの登場によって大きな変化に見舞われていますが、それと並行してネットワーク機器のあり方にも大きな変化が起ころうとしてます。

かつて企業向けのサーバやワークステーションは、メインフレームをはじめとしたベンダ独自のアーキテクチャを備えたさまざまな種類のハードウェアが市場で競っていました。しかし1980年代にx86をベースにしたPCサーバが登場し、CISC対RISCなどの構図をくぐりぬけ、ほぼx86サーバが標準となる状況にたどり着きました。

そしてこの過程で起きた市場の拡大を背景に、x86サーバは大幅な低コスト化と高性能化を実現してきました。ハードウェアが標準化されたことで、ソフトウェア市場も比較にならないほど広がりました。

サーバ市場で起きたようなハードウェアの標準化が、ネットワーク機器の世界でも起こるかもしれません。ネットワーク機器はこれまで、ベンダごとに独自ハードウェアとして開発されていましたが、x86サーバのようにネットワーク機器向けの汎用チップセットをベースにした標準的なハードウェアが登場し、低価格化と高性能化が進むという流れです。

マーチャントシリコン(Merchant Silicon)の勃興

Arista Network-Blog

サン・マイクロシステムズの創業者で、ネットワーク機器ベンダのArista Networksを創業し会長を勤めるアンディ・ベクトルシャイム氏は、ネットワーク機器のチップセットがマーチャントシリコン(Merchant Silicon)、つまりx86プロセッサのチップセットのような商品へと向かうことは必然であると、1年前のブログ「The March to Merchant Silicon in 10Gbe Cloud Networking」に書いています。

The inevitable march towards merchant silicon for Ethernet switching is continuing with the announcement from Intel today that it is acquiring Fulcrum Microsystems.

イーサネットスイッチングがマーチャントシリコンへ向かう必然性は、インテルがFulcrum Microsystemsを買収したことによって続いている。

Fulcrum of course the silicon vendor that is the core of our low-latency switch family that is the most widely used switch across the world for high-frequency trading.

Fulcrumはもちろん、低レイテンシスイッチ製品群のコアを構成しているシリコンベンダーであり、株式などの金融商品を超高速に取引する高頻度取引(HFT)の世界で広く使われている。

すでにネットワーク機器向けのチップセットを販売しているBroadcomの製品は、シスコやジュニパー、IBM、HP、Force10(デル)、そしてAristaなどに広く使われており、ネットワーク機器のマーチャントシリコン化は目に見える形で始まっています。

先月来日した新興のネットワーク機器ベンダPica8のJames Liao氏は、マーチャントシリコンが一定以上の市場規模を獲得すれば、インテルのチップがハイエンドサーバに用いられるほどの高性能を実現したように、カスタムチップと比較しても十分高性能なものになるだろうと発言しています

また、グーグルやFacebookはマーチャントシリコンをベースにした安価なスイッチを台湾メーカーに直接発注し、自社のデータセンターに大規模導入していると言われています。すでに大規模クラウド事業者もマーチャントシリコンの利点を活用しているというわけです。

もちろん、例えばブロケードのように自社で高性能なASICを開発する能力のあるベンダは、ASICの優位性を引き続き市場に訴えかけていくでしょう。同社は100GbEのラインレートのままOpenFlowに対応するという発表を行っています。これはASICの能力を活用したものです。各ベンダとも、ローエンド製品にはマーチャントシリコンを用いても、高付加価値を目指す製品については引き続きカスタムチップを作り続けるのかもしれません。

とはいえネットワーク機器の市場は、マーチャントシリコンの登場で大きく変化しようとしています。

物理スイッチ対仮想スイッチの戦い

ここまで書いてもう1つ、ネットワーク機器の市場で起きている戦いに触れざるを得ないことを思い出しました。それは、物理ネットワーク機器対仮想ネットワーク機器の戦いです。

Open vSwitchのような仮想スイッチやVyattaのようなソフトウェアルータが登場したことにより、x86サーバ上にソフトウェアをインストールすることによって、物理的なネットワーク機器を導入しなくとも、スイッチやルータの機能を利用することができるようになってきました。

特にサーバからのトラフィックを制御する、いわゆるエッジ部分のスイッチでは、トップオブラックやコアのようにトラフィックが集中する部分とは異なり、性能よりも柔軟性と、大量に配備する必要があることから低価格なことが重視されます。

そうするとこれはもう、物理スイッチよりもソフトウェアによる仮想スイッチの方がずっと有利なことは明らかです。OpenFlowのようなスイッチングを制御する標準が登場することで、さらに仮想スイッチが有利になる状況が作り出されています。

ではトップオブラックのような高性能が要求される部分であれば物理ネットワーク機器の地位は安泰かといえば、そうともいえません。例えば、ネットワーク仮想化ベンチャーのミドクラは、ソフトウェアで実現した仮想ネットワーク機器であっても、ネットワーク上でスケールアウトしていけば大量のトラフィックに対応できると主張しています。

仮想ネットワーク機器の登場で、ネットワーク機器がすべてx86サーバとソフトウェアに置き換わるという考え方は、現時点ではネットワーク機器のマーチャントシリコン化よりもさらに大胆なものと言えます。しかしエッジ部分では確実にいま起きている変化です。

この変化がネットワークの内側へとどれだけ浸食していくのかという点も、ネットワーク市場における注目点でしょう。

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カテゴリ サーバ / ストレージ / ネットワーク
タグ  Software-Defined Network , ネットワーク , 仮想化


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