データセンターにまたがる巨大な仮想ストレージを実現する。EMCの「VPLEX」

2010年5月12日

ストレージベンダのEMCは、ボストンで開催中のイベント「EMC WORLD BOSTON 2010」で、同社のプライベートクラウド戦略を明らかにすると共に、その要となる製品「VPLEX」を発表しました。

EMCは、将来のプライベートクラウドが「数千の仮想マシンを、距離を超えて世界中どこへでも移動できる」「世界中に散らばるデータセンターを、1つのリソースとして管理できる」という2つの能力を備えるようになる、というビジョンを描いています。

fig 同社のVPLEX紹介ビデオから。ちなみに、画像中の人物は元インテル、現EMC 情報インフラ担当COOのパット・ゲルシンガー氏

このビジョンの実現のためには、サーバが仮想化技術によって複数のサーバをまとめてリソースプールになるのと同様に、複数のストレージをまとめることでストレージプールを実現することが求められます。サーバもストレージもフェデレーションとすることが重要であり、プライベートクラウドへの道筋だというのです。

EMCの戦略は、プライベートクラウド、それも世界中に分散したデータセンターによって構成されるプライベートクラウドを最適化するためのストレージを提供する、ということです。同社がなぜVMwareを買収し、シスコと手を組んでいるのか、その理由はこの戦略からはっきり浮かび上がってきます。

ストレージのスケールアウトとフェデレーションを実現するVPLEX

同社の戦略の要となる製品が、EMC WORLDで発表された「EMC VPLEX」。ストレージのスケールアウト機能、高度なキャッシュ機能、分散キャッシュ一貫性機能を備えたアプライアンス製品です。

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VPLEXは、複数のストレージを接続することで大きな1つの「仮想ストレージ」を構成することができます。これは従来の「ストレージの仮想化」とは異なるもの。

つまり、あるデータセンター内でストレージが不足してきたら、ストレージを大きな容量にアップグレードするのではなく、新たなストレージをVPLEXに接続することで仮想ストレージを大きくしていくことを可能にしています。ストレージのスケールアウトが実現されます。

さらにVPLEX同士を接続することで、離れた距離にあるデータセンター間にまたがる大きな1つの「仮想ストレージ」を構成することも可能です。

こうしたストレージの集合体を同社では「ストレージフェデレーション」と呼んでいます。

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地域的に離れたデータセンター同士でも、そこにまたがって構成されたストレージフェデレーションは大きな1つの仮想ストレージとして見えます。そして仮想ストレージに対して複数のユーザーが行う操作はリアルタイムで全体に反映されます。データセンターAからデータセンターBへ、稼働中の仮想サーバを移動するVMotionもストレージフェデレーションで実現可能です。

実際にEMCはボストンのデータセンターと、そこから南西50Kmにあるホプキントンにあるデータセンターをストレージフェデレーションで結び、データセンター間でVMotionを実行するというデモンストレーションを公開しています。デモでは、2つの仮想サーバが1つの大きな仮想ストレージを共有しており、45秒程度でVMotionが完了しています。

さらにストレージフェデレーションを世界中のデータセンターに広げることで、将来的にはグローバルフェデフェーションを実現。世界中のストレージが、一貫性を実現しつつ1つの巨大なストレージとして動作するようになるとEMCは説明しています。

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グローバルフェデレーションが実現すると世界中で1つになった仮想ストレージ上でのVMotionが可能になるため、例えば東京が昼間の時には、夜になっているニューヨークやパリのデータセンターでも仮想サーバを稼働させ、東京が夜になる頃には東京へ仮想サーバを戻して、ニューヨークやパリのオフィスが今度は余裕のある東京のデータセンターへいくつかの仮想サーバを移動させて活用する、といったことが可能になります。

仮想サーバは余裕のあるデータセンターを求めて、世界中を自由に移動することができるわけです。そしてその基盤として、世界中のデータセンターから仮想的に1つに見えるストレージフェデレーションを実現しようというのがEMCのビジョンであり、そのための製品がVPLEXです。

仮想ストレージは大きな変化をもたらす

ストレージのスケールアウトは難しいものです。100GBのストレージがいっぱいになったからもう1つ100GBのストレージを買ってきたからといって、それはあくまで2つの100GBストレージであって、1つの200GBストレージのようにシンプルに扱えるわけではありません。

多くの企業のデータセンターではデータの増加につれて多くのストレージが林立するようになり、それがストレージ管理をますます難しくしている側面がありました。最初から大容量のストレージを購入できれば、ストレージの利用効率を高め、管理を容易にできますが、そのような投資がされることはほとんどありません。

VPLEXのストレージのスケールアウト機能が提供されれば、小さなストレージから徐々にストレージを大きくすることが容易にできるようになり、しかも管理は仮想的なストレージ1つに対して行えばよいため、多くのストレージ管理者にとって嬉しい知らせでしょう。そしてフェデレーションによるデータセンターをまたがった仮想ストレージの実現は、EMCがいうように、より効率的で安全なプライベートクラウドを実現するはずです。

もちろん、VPLEXで実現しようとしている機能の背後にかなり複雑な仕組みがあることは想像に難くなく、それゆえに例えばデータベース用途のようなものにまで使えるのか? 負荷に対してどれだけ対応できるか、本当に管理がシンプルになるのか? など、実際の導入前にはさまざまな検証が必要でしょう。

しかし、ストレージのスケールアウトとフェデレーション、それによる仮想ストレージの実現は、EMCの言うとおり、ストレージの使い方やプライベートクラウドのあり方に多くの変化をもたらすことも間違いありません。

EMCはVPLEXによってストレージが進化する方向をはっきりと示し、それを市場に投入しました。今後のストレージ市場やプライベートクラウド市場に大きな影響を与える要注目の製品です。

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タグ : ストレージ , 仮想化



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