IBM、ハードとソフトを統合した新カテゴリ「Expert Integrated Systems」の製品「PureSystems」を発表。オラクル追撃へ

2012年4月12日

IBMは、同社のハードウェアとソフトウェアを統合して提供する新しいカテゴリ「Expert Integrated Systems」の新製品として「IBM PureSystems」を発表しました

IBMは「新たなコンピューティング時代の幕開け」としてPureSystemsを世界6都市で一斉に発表することにしており、日本でも今日12日に都内のホテルでプレス、一般客などに対して大々的な発表会が行われます。

ハードウェア、ソフトウェア、そしてパターン

PureSystemsは、PureFlexとPureApplicationの2つのラインナップがあり、全体がパターンによって最適化構成を実現しています。

IBM PureFlex System
サーバ、ストレージ、ネットワークのハードウェアをラックに収めたシステム。サーバはインテルプロセッサ、Powerプロセッサが選択可能で、ストレージはハードディスクとSSDを搭載可能。規模別にExpress、Standard、Enterpriseの3種類が用意されている。

ファンやスイッチ、電源などラック内のコンポーネントはすべて冗長構成。仮想化を用いたインフラ向けに最適化されている。

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(インターコネクトとして、サーバ間は10GbE、サーバとストレージ間は8Gb Fibre Channelのようです。追記:16Gb FCやInfinibandなども対応していました)

IBM PureApplication System
PureFlexの上にDB2やWebSphereなどのミドルウェアまで搭載し、最適化したシステム。マネジメントコンソールから、あらかじめ用意されたアプリケーションの構成パターンのいずれかを選択。次に性能やスケーラビリティ、冗長性、セキュリティなどを設定。デプロイボタンを押せば自動デプロイが開始される。

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対応ソフトウェアはIBM製品だけでなく、サードパーティアプリケーションなど多数になる模様。

Patterns of Expertise
インフラストラクチャーパターン、プラットフォームパターン、アプリケーションパターンなど、ユースケースに応じてハードウェアとソフトウェアを最適化したパターンがあらかじめ用意されている。これを適用することで短時間で効率の良いシステムを簡単に展開することが可能。

こうしてみるとPureSystemsの特徴は、ハードウェアやソフトウェアに対して目的に応じて複数の選択肢が用意されており、それらに対して最適な構成パターンをIBMが用意することで、データベースやビジネスアプリケーションなど幅広いニーズに対応できる点にあるといえるでしょう。

IBMはオラクルと言っていることがそっくりだ

IBMリサーチのJohn Kelly氏は、Expert Integrated Systemsの発表において、「Expert Integrated Systems」の目的を次のように語っています

「ハードウェアとソフトウェアを最も深いレベルで統合することで、私たちはこれまでになし得なかったパフォーマンス、信頼性、ユーザビリティを手に入れることができるのです」

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このセリフは、先週六本木で開催されたばかりのOracle OpenWorldの基調講演でエリソンCEOが「私たちが信じているのは、ハードウェアとソフトウェアを協調させることが最高のシステムを実現する手段だということだ」と言ったこととそっくりです

オラクルが「Engineered System」という言葉を作り出してハードウェアからアプリケーションまでの垂直統合システムを作り出したのと同じように、IBMは垂直統合システムを「Expert Integrated Systems」という言葉で売り出そうとしています。IBMがオラクルのEngineered System追撃に出た、と言って間違いではないでしょう。

しかも垂直統合はオラクルとIBMだけが取り組んでいるものではありません。デルはストレージベンダのイコールロジック、ネットワーク機器ベンダのForce10などの買収をしてきましたし、ストレージベンダの3PARの買収をデルと競い、競り落としたヒューレットパッカードはネットワーク機器ベンダの3COMも買収しており、こちらも垂直統合の動きがあります。

サーバへと進出したシスコはストレージベンダのEMC、仮想化ベンダのVMwareと連合を組んで、垂直統合的なシステムの提供を始めています。

エンタープライズ市場のハードウェアは垂直統合が大きなトレンドなのです。

もともとIBMはメインフレームでハードからソフトウェアまで垂直統合されたシステムを提供してきました。それが現代の垂直統合システムと違うのは、ハードウェアもソフトウェアもオープン化が進み、垂直統合システムを利用していたとしてもメインフレームほど極端なロックイン状況にはなりにくい、というところです。

垂直統合システムは、システムの複雑さを隠蔽し、ITをユーティリティ的に利用できるようにするという現在のITの方向性に合致しています。そしてそれは方法こそ異なりますが、クラウドが提供しようとしていることと基本的には同じです。

ITのユーティリティ化、サービス化といういまの方向性が変わらない限り、垂直統合システムはブームではなく確実な流れとしてクラウドと共に定着していくことになるでしょう。

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Junichi Niino(jniino)
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