「記事には書けなかったHTML5の話」を話してきました(後編)

2010年6月23日

6月16日に行われた「第7回 HTML5とか勉強会」で、新野が発表した「記事には書けなかったHTML5の話」を紹介しています。

この記事は「「記事には書けなかったHTML5の話」を話してきました(前編)」の続きです。前編では、グーグル、モジラ、オペラ、ルナスケープにインタビューしたときのこぼれ話を紹介しました。

後編はアドビにインタビューしたときのこぼれ話から。

アドビシステムズ

Adobe AIR/FlashはHTML5と連携しモバイルにも進出 - @IT

この連載の中でオペラのホーコン・リー氏も言っていましたが、「HTML5の登場でFlashは不要になる」という意見が広まりつつある中で、アドビシステムズがHTML5にどういうスタンスをとるかは注目の的でした。

アドビは年末頃からAIR 2.0でHTML5に対応することを明らかにするなど、徐々にHTML5に対する準備もできつつあり、年明けにインタビューを申し込んでから少し待たされましたが、3月になってついにHTML5についてインタビューする機会が訪れました。

インタビュー相手は、米国から来日したデベロッパーマーケティングのマイク・ポッター氏。記事の掲載は2010年4月。次のような内容でした。

このインタビューでアドビがHTML5に対してどう発言するか、どれだけHTML5に前向きなのかは事前には予想できませんでした。それだけに「HTML5は、Flashとうまく連係できるテクノロジー」という言葉を聞けたのが最大の収穫でした。インタビューの印象というか感想をまとめると次の3つ。

アドビはこれからもFlashがHTML5に先行しているというメッセージを発信しつづけると思いますし、それは技術的に見ても間違いないことだと思います。

このブログ、Publickeyの読者ならご存じだと思いますが、僕はアドビがHTML5にどう対応するのか、以前からずっと注目し、詳しく伝え、分析してきました。その上でこのインタビューの感想として感じたのは、率直にいえばアドビはいまHTML5について必至に勉強している最中なのだろうということ。

Webオーサリングツールとして間違いなくトップベンダーのアドビはまだHTML5に本気をだしていないけれども、この先きっと本気になる、というのは予想でもあり、願望でもあります。なぜそう予想するかについては、この「記事に書けなかった話」の最後にお話しすることになります。

ちなみにこのインタビューの後、5月に米国で行われたグーグルのイベント「Google I/O」では、アドビのCTOケビン・リンチ氏がキーノートに登場してHTML5への注力を表明しています。

マイクロソフト

Web標準への対応を鮮明にしたIEの明日はどっちだ - @IT

この連載が始まったとき、まさか連載期間中にマイクロソフトへのインタビューが実現するとは思っていませんでした。連載が始まった頃は「果たしてマイクロソフトがHTML5に対応する、という日はくるのだろうか?」と思っていたのです。マイクロソフトのHTML5に対するスタンスは、外から見るかぎりこの約1年でがらりと変わりました。

最初にマイクロソフトにインタビューを打診したのは、昨年末のことでした。すでに11月にIE9の開発開始とHTML5に対応することが発表されていました。

このときの打診は正式なものではなく、記事でインタビュー先ともなった五寳匡郎氏にたまたま挨拶をする機会があり、そのときに「HTML5についてインタビューしたいんですけど…」と水を向けて見るも、「いやまだちょっと…」的な返事をいただく、というやりとりでした。その後3月にマイクロソフトからさらにIE9の詳しい発表があり、4月にはついにインタビューさせてもらえる日がやってきました。

掲載は2010年5月。インタビュー先は前述の 開発統括部 五寳匡郎氏とマーケティング統括本部の溝口宗太郎氏。以下のような内容でした。

まだマイクロソフトに対しては「本当に標準に対応してくれるの?」と疑いの目で見ている人が多いのも事実。そこを特につっこんで聞いてみたつもりですが、その点については相当自信があるように感じました。

3つ目に書いた、クラウドへの傾倒とHTML5へのコミットは関連していると想像しています。もちろん、Silverlightとの機能の重複はありますが、マイクロソフトはこれまでも社内で機能が重複する製品やサービスを何度も経験してきていますから、Silverlightとの棲み分けもそれほど深刻に考えていないと思います。

W3C

HTML5に関わらないと日本企業は世界から遅れる (1/2) - @IT

Web標準を策定している世界組織「W3C」。そのW3Cをホストする3つの拠点が米国、欧州、そして日本の慶應義塾大学にあります。世界に3つしかないW3Cの拠点の1つが日本にあるというのは実はとても重要なこととして捉えるべきなのだと思っていて、ちょうど日本にもHTML5のインタレストグループができたのをきっかけにインタビューをお願いしました。

W3Cへのインタビューは、連載の時期的にはルナスケープとアドビの間に行ったのですが、このこぼれ話では先にベンダへのインタビューをまとめて紹介したかったので、連載の順番とは入れ替えて最後にW3Cの話を紹介します。

記事の掲載は2010年4月。インタビューは、W3C/KeioのSite Manager一色正男氏、W3C HTMLチームコンタクトのマイケル・スミス氏。それにW3C HTML5 Japanese InterestGroup Chairの矢倉眞隆氏らに行いました。内容は次のようなものでした。

マイケル・スミスさんは立派なヒゲがトレードマークだったのですが、「最近ヒゲを剃ったらしい」という噂が勉強会当日に会場で流れていました;-)

連載を通して考えたこと、HTML5はなぜ重要か?

連載を通して、そしてこのPublickeyを書きながら考えていたこと。「なぜHTML5は重要なのでしょうか?」。そこには2つの理由があると思います。

1つは理念的なものです。

つまり、ネットは誰でも参加できるものでなければならない。そのためには特定の企業の意志によって排除されたりしない、みんなで決めた標準が大事なのだ、という考え方です。

この連載とは別の機会に、オペラCTOのホーコン・リー氏の話を聞く機会がありました。彼はそのときこう言っていました。

「活版印刷の発明から約500年。HTML/CSSもこれから先500年は使われるだろう」

知識を表現するための仕様として、HTMLや関連仕様はこの先500年は使われる決定的に重要なものなのだ、ということをリー氏はこの言葉に込めています。

しかしHTML5や関連仕様の重要性はもう1つあると僕は考えます。企業の戦略からの視点です。この図を見てください。

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マイクロソフトのクラウド戦略を示した左の図は、左にモバイルデバイス、真ん中にPC、右にセットトップボックスがあり、その下のVisual StudioとExpression Webがすべてのデバイスをサポートすることを示しています。

右側のアドビのFlash Platform戦略を示した図も、上側にはモバイルデバイス、PC、セットトップボックスなどが並び、下にあるさまざまなFlash/AIR製品でれらをサポートすることを示しています。2社の戦略はこう説明できます。

そうすると、すべてのクラウドデバイスに対応するアプリケーションプラットフォームは、HTML/CSS/JavaScriptという選択肢だけが残ったのです!

各社とも、PCからモバイルデバイスまで共通のWebブラウザを提供し始めています。グーグルはChromeを、モジラはFirefoxとFennecを、オペラはOperaを、アップルはSafariを。 おそらくマイクロソフトもアドビも、HTML5こそすべてのデバイスに対応する共通のアプリケーションプラットフォームと考えるでしょう。だからこそ両者ともHTML5に本気で取り組むはずだと、僕は考えています。

つまりこうなります。

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だからHTML5は重要なのではないかと考えます。

ご静聴ありがとうございました!

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タグ : Adobe , Adobe Air , Flash , HTML5 , Microsoft , Silverlight , Web標準



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