3分で読める、本日発表のアドビ最新事業戦略

2010年4月22日

アドビシステムズのエグゼクティブ5人が揃って来日し、同社の事業戦略を発表しました(エグゼクティブが国内に勢揃いするのはアドビの歴史上初めてだそうです)。

同社は最新バージョンのPhotoshopやIllustratorなどを含む新製品「Adobe CS5」を今月発表した一方で、その直前にアップルのiPhone/iPadでの同社の主力技術であるFlashの利用を完全に拒否され、またそのFlashはHTML5などWeb技術の進化によって現在の強みを失うのではないか、といった見通しが語られてもいます。

同社のエグゼクティブたちは今後の事業戦略について何を語ったのか。今日(4月22日)の午前中に行われた発表の内容について簡潔に紹介していきましょう。

fig アドビのエグゼクティブたち。左からジャシュ・ジェイムズ氏(オムニチュアビジネスユニット担当)、ロブ・ターコフ氏(ビジネスプロダクティビティ担当)、シャンタヌ・ナラヤン氏(社長兼CEO)、ポール・ワイスコフ氏(コーポレートデベロップメント担当)、ジョン・ロイアコノ氏(クリエイティブソリューション担当)、クレイグ・ティーゲル氏(日本法人代表取締役社長)

クリエイターに対する最大のテクノロジープロバイダ

社長兼CEO シャンタヌ・ナラヤン氏。ビジョンと戦略について。

アドビはこれまで、PostScriptやPDFといった技術を開発し、人とアイデア、情報の関わりを革新してきた。

コンテンツとアプリケーションの境界は消えていく。また、コンテンツを最適化することで収益化が可能になった。

そしてPC以外からのネットへのアクセスが急速に増え、マルチスクリーン化していく。

アドビはこうしたコンテンツクリエイターに対するテクノロジーの最大のプロバイダであり、マルチスクリーンへの対応、コンテンツの最適化の手段などを提供する。

Flash Platformはほかの技術を凌駕する勢いで革新を続けている

コーポレートデベロップメント担当上級副社長 ポール・ワイスコフ氏。Flash Platformについて。

Flash Platformはほかの技術を凌駕する勢いで革新を続けている。しかもすでに幅広いリーチを獲得している。

と同時に、アップデートした場合の浸透率も高く、新バージョン登場後1年以内に多くの利用者がアップデートしており、クリエイターは早く新しいテクノロジーを使うことが可能。

いまから数カ月以内に、PC、スマートフォン、Webブラウザ、単独のアプリケーションのすべての利用形態に対応する技術、Flash Player 10.1をリリースする。省電力、高性能も実現した。

Flashは、さまざまなデバイス、チップセット、OSなど複数の環境で共通のプラットフォームを提供するソフトウェアとなる。

コンテンツの作成、配信、分析のワークフローが完成

クリエイティブソリューション事業部上級副社長兼ゼネラルマネージャー ジョン・ロイアコノ氏。IllustratorやPhotoshopなどから構成されたスイートパッケージ「Creative Suite」(CS)について。

前バージョンのCS4をリリースしたときの経済状況はよくなかったため多くの顧客がCS4をスキップした。現在では、64ビットOS、Windows 7、グラフィックアクセラレータなどコンピューティング環境も新世代になりつつあるため、今月発表したCS5は大きく期待できる。

新製品のCS5は、会社の歴史上もっとも魅力的な製品。新機能の画像自動修正機能などは「まるで魔法のようだ」と言われるほど高い評判を得ており、非常に自信を持っている。 コンテンツを作るだけでなく、コンテンツをターゲティングし、配信し、視聴してもらい、それを分析して改善していくというワークフローができるようになった。

電子出版については専業チームがあり、特に雑誌と新聞にフォーカスしている。Wiredやニューヨークタイムズなどと協業して取り組んでいる。

コンテンツに対するアクセス解析で売上げを増加

オムニチュアビジネスユニット担当上級副社長兼ゼネラルマネージャー ジャシュ・ジェイムズ氏。アクセス分析サービスのOmnitureについて。

オムニチュアは日本で多くの顧客を抱えており、コンバージョンを高めることでWebへの訪問者を顧客へと変えることができるようになる。

オムニチュアによるWebサイトの最適化で、デルタ航空は年間売上げを1300万ドル増加させることに成功し、翔泳社は電子メールの申込者を700%向上させることに成功している。

オムニチュアのターゲットユーザーはオンラインマーケッター、マーケティングエグゼクティブ、アナリストなど。アドビとオムニチュアが統合することにより、開発したコンテンツに対するアクセスを解析し、最適化するワークフローを組むことができる。

デジタルドキュメントで情報処理のサイクルを早くできる

ビジネスプロダクティビティ事業部担当上級副社長兼ゼネラルマネージャー ロブ・ターコフ氏。AcrobatとLiveCycleについて。

2010年は、電子ドキュメントを用いたコラボレーションと、カスタマーインタラクションの2つに注力していく。

紙からデジタルへ切り替えることで、紙を減らすだけではなく、社内の情報処理のサイクルを早くすることができる。電子ドキュメント内にリッチコンテンツエンジンを入れて、3D画像を組み込んだり、ドキュメント上での共同作業などを可能にしている。

顧客サービスのためのアプリケーションが登場しており、SAPやオラクル、マイクロソフトなどの業務アプリケーションの上に、アドビのソリューションによって顧客が利用するためのデスクトップ画面、アプリケーションなどをLiveCycleなどを用いて構築できる。

アップルがFlashを排除したことについてどう考えているのか?

質疑応答では、アップルがiPhoneでFlashの技術を完全に排除したことについての質問が行われました。アドビの複数のエグゼクティブが以下のように回答しています。

アップルはオープンプラットフォームを選択しないとした。私たちはそれ以外のパートナー、グーグルやノキア、パーム、リムなどと協業していきたい。多くの顧客は、いちどオーサリングしたコンテンツはあらゆるプラットフォームにパブリッシュすることを求めており、それに従って注力していく。

クローズなベンダはそうした共通のテクノロジが使えなくなるだろう。

「Package for iPhone」(FlashアプリケーションをiPhoneアプリに変換する機能、Flash Builder CS5に同梱される予定)は出荷するが、その機能に関しての投資は今後行わない。

特に新しい戦略発表はなく

今回の事業戦略発表は特に目新しい内容はなく、既存の同社の戦略を新製品などに合わせてアップデートしたものといえます。また、アップルがiPhoneからFlashを排除したこと、HTML5がFlashの脅威になっているかどうか、などの競合については発言したがらず、自社の強みにフォーカスした説明を意識しているようでした。

今後、オムニチュアとの統合が進み、現在Acrobat.comなどで実験的に行われているオンラインサービスなどが進展するに従って、少しずついままでにない新たな戦略が登場することになるのでしょう。

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