クラウド基盤となるソフトウェア、ビットアイルはOpenStack、IDCフロンティアはCloudStackを採用へ。担当者に理由を聞いた

2011年5月27日

国内でOpenStackやCloudStackといったオープンソースによるクラウド基盤の検討、採用が相次いで発表されました。

データセンター事業者のビットアイルは5月10日、「OpenStack」を利用したパブリッククラウドサービス構築を目指した検証プロジェクトをスタートすると発表しました。検証プロジェクトは、グループ会社のテラスを中心として進めていくとのこと。

OpenStackのディストリビューションとしては、ミドクラのMidoStackを選択しています。

一方、Yahoo! JapanグループのIDCフロンティアは5月12日、「CloudStack」を国内で初めて採用したクラウドサービス「NOAHプラットフォームサービス」を7月から開始すると発表しました。

ビットアイルが検証を開始するOpenStackは、NASAが開発し利用しているクラウドのNebulaをベースにしたもので、クラウド事業者のためのオープンソースとして開発されています。

IDCフロンティアが採用を発表したCloudStackは、米Cloud.comがオープンソースとして開発しているソフトウェアで、すでに韓国のKTやシンガポールのSingTelなどで採用されている実績があります。

なぜOpenStackを、CloudStackを選ぶのか、それぞれの理由

ビットアイル、IDCフロンティアはそれぞれなぜOpenStack、CloudStackを選択したのでしょうか? それぞれの担当者に理由をたずねたところ、以下のような返答をいただきました。

ピットアイル マーケティング本部 サービス開発部 福澤克敏氏。

「一番の理由は、OpenStackが非常に活発に活動しているオープンソースプロジェクトである、ということです。有償版、無償版といった区分けのないシンプルさや、当初から大規模なクラウド事業者向けのスケーラビリティを志向しているため、クラウドサービスの実現に当たって要件を満たしやすい、といったこともあります。

また、ビットアイルグループが出資しているミドクラが、積極的にコミュニティで活動している、というのも理由の1つです。

現状ではCloudStackの方が完成度が高く、事業者用の管理機能なども充実しており、特にカスタマーポータル機能が提供されている点は魅力的です。反面、CloudStackではサービスとしての特長を出しにくいと考えています。OpenStackはCloudStackに比べると始まったばかりのプロジェクトですが、開発スピードも早く、今後の機能の拡張に期待を持っています。」

IDCフロンティア ビジネス推進本部 サービス開発部 大屋誠氏。

「当社としては、クラウドエコシステムに早期に飛び込みつつ、品質と拡張性、サポートをきちんと提供する前提での選考結果がCloud.comのCloudStackでした。

オープンソースとしてベンダ中立であり、複数データセンタや大規模ユーザに対応し、サービス提供上で重要となるユーザー管理、メータリング、課金、顧客サポート、クーポン発行などの販促機能などの周辺実装や連係ができています。

プライベートクラウドとの連携するビジョンも持っており、実績としてTATA、KT、CloudCentralなどを含め米国でも多くの例があることも評価しています。

また、APIの完成度の高さ、AWS互換APIプロジェクトのCloudBridgeが活発に進んでいることや、RightScaleやenStratusのようなクラウド管理サービスとの連携がすでにできている点、マルチVM対応でロックイン要素が少ない点も理由です」

クラウドサービスは急速に競合の時代へ

これまでクラウドサービスはグーグル、Amazon、マイクロソフトのように自社ですべてを開発できる企業が中心となって提供してきました。

しかし昨年から今年にかけてニフティやソフトバンクテレコムがVMwareのソフトウェアをベースにしたクラウドサービスの展開を開始し、そして今回のビットアイルやIDCフロンティアがOpenStackやCloudStackの採用へと動き始めるのを見ると、クラウドサービス事業へ参入する条件が、自社で開発できることから調達することへと変化してきたことが分かります。

この動きはIaaSだけではありません。VMwareは「Cloud Foundry」、レッドハットは「OpenShift」というPaaSの基盤をそれぞれオープンソースとして公開を始めていますから、同じことがPaaSで起きるのも時間の問題でしょう。

利用者にとってはクラウドサービスの選択肢が広がる一方で、事業者にとっては急速に競争が激しくなってくる時代へと突入することになります。

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