データセンター向けサーバとして注目の高密度サーバを実現する技術とは、SeaMicroに聞く

2012年2月22日

サーバの消費電力と発熱の増加はデータセンターを効率的に運営する上での課題として認識されており、その解決策として低消費電力、低発熱、そして実装面積を小さく抑えた「高密度サーバ」が注目されています。

米SeaMicroは、高密度サーバの分野で頭角を現しているベンチャー企業です。同社は高性能なXeonプロセッサを用いながら、通常のラックマウント型サーバと比較して電力消費量は半分、実装密度にして3倍となる新製品「SM10000-XE」を発表。4コアのXeon、32GBメモリのサーバを64台搭載しています。

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高密度サーバの多くはARMやAtomといった低消費電力のプロセッサに特化して開発されており、同社もこれまでAtomベースの製品を提供してきました。しかし今回の同社製品の大きな特徴は、Xeonのような高性能プロセッサを用いて高密度サーバを実現した点にあります。

同社はどのような技術を用いて高密度サーバを実現しているのでしょうか。同社ファウンダー バイスプレジデントのAnil Rao氏(写真右)と、バイスプレジデント ハードウェア&システムエンジニアリング Dhiraj Mallick氏(写真左)に話を聞きました。

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高密度サーバを実現する3つの技術について

─── 御社の製品には高密度サーバを実現するために「IOVT」「TIO」「Freedum Supercompute Fabric」という3つの技術が使われているそうですが、それぞれの技術がどのようなものか、教えていただけませんか。

Mallick氏 データセンターで稼働するサーバには高い性能以上に、より小さい消費電力、より小さい発熱、そしてより小さい発熱が求められるようになってきています。SeaMicroのこの3つの技術は、こうしたサーバの課題を解決するためのものです。

Rao氏 従来のサーバでは、マザーボード上にSATAやイーサネット、コンソールといったインターフェイスのためのチップセットや、BIOSなどを備えています。私たちはこれらのを「IOVT」技術によって仮想化してマザーボードから削除し、本当に必要な部品だけを載せました。

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これによってマザーボード上の構成要素の90%が削減され、消費電力の削減とマザーボードの小型化を実現したのです。

─── OSやハイパーバイザーからはどう見えるのでしょうか?

Mallick氏 もちろんこれらの機能が消えてしまったわけではありません。シャーシ内にBIOSやSSDが備わっており、サーバから共有されています。そして、サーバ上で動作する仮想化ハイパーバイザやOSからは、従来のマザーボードとまったく同じようにSATAやイーサネットが全部ローカルにあるように見えます。特別なドライバも必要ありません。

Rao氏 IOVTと密接に結びついているのが、使われていないCPUとチップセットの機能を止めることで消費電力を抑える「TIO」技術です。サーバでは使われないグラフィック、オーディオなどの機能も止めています。

─── 使われていなければ電源を切るという技術は比較的簡単そうに思いますが、なぜ他社はできないのでしょうか?

Rao氏 これはIOVT技術がないと実現できないからです。IOVTとTIOは一緒に動いている技術なのです。

Rao氏 そしてすべてのサーバが「Freedom SuperCompute Fabric」(以下Fabric)で接続されています。これは1ソケットあたり10ギガビットの帯域でサーバ間を接続する高速なインターコネクトです。

通常、サーバ同士は10GbEのような高速なネットワークで接続され、その接続をまとめるためにラックの上部にスイッチやロードバランサなどが必要になりますが、Fabricによってすべて置き換えられるため不要になります。これによってサーバ間のネットワーク構築に必要だったすべてのモジュールが不要になり、消費電力も抑えられます。

もちろんこれもサーバから見ると、あたかもイーサネットで接続されているように見えます。またシャーシから外部へは最大16ポートの10GbEで接続可能です。

Fabricも私たち独自の技術で、2010年に最初の製品を出してから今回の製品は第二世代にあたります。

大規模接続されたサーバに効率性を持ち込む

Mallick氏 これからのサーバは大規模に接続されたものとなるでしょう。それがクラウドです。私たちのテクノロジーは、ここに効率性を持ち込むものなのです。そしてそれは特定のプロセッサなどに依存するものではありません。どんなタイプのプロセッサやサーバでも私たちのテクノロジーは利用できます。そこで、私たちのテクノロジーはフリーダムという名前を付けているのです。

─── いまデータセンター向けのプロセッサには、ARMのような低消費電力高効率に向かう方向と、Xeonのようにマルチコアで高性能に向かう方向があります。SeaMicroはどちらを重視していますか?

Rao氏 どちらも重要です。重要なのは正しいスケール(ライトスケール)を実現することです。自動車で例えれば、近所の移動にはプリウスのような自家用車があっているでしょうし、建築には大型トラックもいるでしょう。その用途に合った正しいスケールを実現することこそ、いちばん大事だといえます。

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Junichi Niino(jniino)
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