Google Cloudも大規模データ転送を物理ドライブで。「Transfer Appliance」発表。ラックマウント可能な100TBと480TBの2モデル

2017年7月19日

Googleは、オンプレミスからGoogle Cloud Platformへ物理ドライブを送付することでオンライン経由よりも迅速にデータ転送を行うアプライアンス「Transfer Appliance」を発表しました

「Transfer Appliance」はデータセンターの19インチラックに収まる大きさ。2Uで100TBの容量持つモデルと4Uで480TBの容量を持つモデルの2種類が用意されます。

それぞれの容量は物理容量で、ここにデータが圧縮されて保存されるため、論理的には物理容量の2倍程度のデータが保存可能とされています。

fig

Transfer Appliance導入の理由は、大規模データをオンラインで転送すると時間が掛かりすぎるからだとGoogle。

Working with customers, we’ve found that the typical enterprise has many petabytes of data, and available network bandwidth between 100 Mbps and 1 Gbps. Depending on the available bandwidth, transferring 10 PB of that data would take between three and 34 years — much too long.

顧客との作業において、私たちは一般的な企業は数ペタバイトのデータを保有し、そのネットワーク回線は100Mbpsから1Gbps程度であることを知るようになりました。そのネットワーク帯域幅にもよりますが、10PBのデータをオンラインでを転送しようとすると3年から34年ほどかかることになります。これはあまりに長すぎます。 (「Google Cloud Platform Blog: Introducing Transfer Appliance: Sneakernet for the cloud era

Transfer Applianceを利用することで、ネットワークの帯域に負荷を掛けることなく、数週間以内にデータを物理ドライブにコピーして、Google Cloudへ送付。Google Cloud Storageでアクセスできるようになります。

どのくらいのデータの大きさだとTransfer Applianceの送付の方が速くなるのか、Googleの試算によると、ネットワークの帯域が1Mbps程度の場合、100GBのデータ転送にかかる時間は約12日、1TBだと124日で、このあたりのデータ量から、Transfer Applianceを利用した方が速くなります。

帯域が100Mbps程度の場合、10TBのデータ転送に12日、100TBの転送に124日となり、帯域が1Gbpsだと100TBの転送に12日、1PBの転送に124日ということで、このあたりからTransfer Applianceの方が速くなりそうです。

クラウド市場の競争において顧客のデータを取り込むことが重要になってきています。データはコンピュートとは比べものにならないほど、ほかのクラウドへ移行することが難しいためです。

そのため、それぞれのクラウドベンダは低コストかつ多様なストレージサービス、機械学習を含む高度で高速なデータ分析能力など、いわゆるビッグデータ対応の強化に注力しています。Transfer Applianceのような大規模なデータ転送サービスも、もそうした競争のなかで重要な要素になると考えられます。

なぜラックマウント型にしたのか?

物理ドライブを送付してクラウドへデータ転送するサービスとして、Amazon Web Services(AWS)は2015年に「Amazon Snowball」を発表しています

そしてこのAmazon Snowballはいかにも頑丈な外見をしています。

fig2015年10月に発表されたAmazon Snowball

一方、Transfer Applianceはラックマウント型の外観です。なぜGoogleはTransfer Applianceをそのような形にしたのでしょうか。

Customers tell us that space inside the data center is at a premium, and what space there is comes in the form of server racks. In developing Transfer Appliance, we built a device designed for the data center, that slides into a standard 19” rack. Transfer Appliance will only live in your data center for a few days, but we want it to be a good houseguest while it’s there.

顧客はデータセンター内のスペースは貴重なものだと私たちに伝えました。そのスペースはサーバラックの形状をしたものです。そこでTransfer Applianceの開発にあたり、データセンターに適したものとして開発し、標準の19インチラックにスライド可能なものにしました。Transfer Applianceはデータセンター内に数日しか置かれませんが、それでも私たちはそこにあるあいだ、よきゲストとなるようにしたかったのです。

このあたりにAWSとGoogleの物理データ転送についての考え方の違いが読み取れるのかもしれません。

Transfer Applianceは米国内でベータプログラムが開始され、100TBモデルの利用料が300ドル(Fedexでの配送が約500ドル)、480TBの利用量が1800ドル(同配送料が約900ドル)となっています。

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Junichi Niino(jniino)
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