「OpenStack Summit Tokyo 2015」が開幕。基調講演にYahoo!、NTTグループなどが登場、「OpenStackはデータセンター抽象化のコア」(前編)

2015年10月27日

クラウド基盤ソフトウェアをオープンソースで開発する「OpenStack」は、いま最も注目されているオープンソース開発プロジェクトの1つです。そのOpenStackの開発者、ユーザー、関連ベンダなどが半年ごとに一堂に集まり情報交換や今後の方針などを行うイベント「OpenStack Summit」の初めての日本での開催となる「OpenStack Summit Tokyo 2015」が今日、10月27日に開幕しました。

会場は品川のグランドプリンスホテル新高輪とグランドプリンスホテル高輪のほぼ全域。参加は有償にもかかわらず5000人以上が来場し、その半数以上は海外から。30人を超える報道関係者も7割は海外からと、国際的な大イベントとなっています。

9時から約2時間続いた基調講演も英語で行われました。その内容を紹介しましょう。

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ようこそOpenStack Summit Tokyoへ!

日本OpenStackユーザ会、長谷川章博氏。

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ようこそOpenStack Summit Tokyoへ!

日本で最初にOpenStackのユーザー会を始めたときはとても少人数で、まさかこんな大きな会場の基調講演に登壇するようになるなんて想像もしませんでした。しかし今日、影響力のある5000人以上の人たちが世界中から来場してくれて大変うれしく思います。

OpenStack Foundationエグゼクティブディレクター Jonathan Bryce氏

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この基調講演はこの部屋だけでは参加者が入りきれないので、いくつものサテライト会場からみなさんが見ています。

このイベントを実現するのに協力してくれたスポンサーのみなさんに感謝申し上げます。また、このイベントを実現するためにさまざまな活動をしてくれた日本OpenStackユーザ会のみなさん、鳥居さん、中島さん、真壁さん、長谷川さん、ありがとうございます。

(写真奥から、NEC 鳥居隆史氏、伊藤忠テクノソリューションズ 中島倫明氏、日本マイクロソフト 真壁徹氏、ビットアイル 長谷川章博氏)

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今日、OpenStack Foundationは個人向けのプロフェッショナル認定制度「OpenStack 認定管理者」を発表します。OpenStackに関する専門知識の標準的な基準ができあがることになります。試験はバーチャルで受けられ、グローバルで通用します。

試験は2016年に開始予定です。OpenStackのタレントがたくさん育つことを期待しています。

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先日発表した「OpenStack Liberty」には、2000人もの人たちがコントリビューションしてくれました。400万行ものコードが含まれています。

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OpenStackの開発には要件定義も含めてあらゆる人が参加できます。ComcastやYahoo!といった大きなユーザーも上位のコントリビュータに入り、ユーザーとしての発言権があり、そうしたことが直接反映されるのが大きな特長です。

ただ一方で、OpenStackとは何なのかという点で、やや混乱をまねくところもありました。これについて少しここでお話をしましょう。

OpenStackには「コアサービス」があります。これはユースケースの80%や90%程度の高い割合で展開される機能で、あらゆる環境で必要なもの、コンピュート、ネットワーキング、ストレージなどです。

一方でBigdata向けの機能、DBaaSの機能などは、それほど幅広く利用されてはいませんが開発は進んでいて、オプションとして選択できるというものもあります。

こうした中でOpenStackにおける相互運用性のガイドラインをコミュニティのプロセスで作り上げてきました。OpenStackの運用においてすべてのオペレータが共通の体験がもたらされるというものです。

OpenStackによるそれぞれのクラウドにどんな機能を入れるのかによって、いろんなフレーバーが出てきます。しかしそのフレーバーのロックインが起こらないようにOpenStack共通の体験が大事です。

OpenStackボードメンバー DefCore&Diversityワーキンググループ Egle Sigler氏

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DefCoreコミッティとは、どの機能がどのくらい使われているのかスコアリングをしたり、意見を集め、共通体験のための相互運用性ガイドラインを出していきます。

OpenStackとベアメタルやコンテナの関係

再び、Jonathan Bryce氏。

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多くのOpenStackの環境では、物理マシンがあって、その上に仮想マシンが乗っている。あるいはベアメタルやコンテナを利用することも最近では起きています。

そしてDockerやKubernetesやMesosなども利用されています。

こうしたKubernetesやMesosなどはOpenStackを置き換えるものですか? 競合するものですか? とよく聞かれるようになりました。

ここではそうした用途で先行しているOpenStackユーザーを壇上にお招きして、話を聞くことにしましょう。

Lithium、Cloud Platform Engineering Team Lead、Lachian Evenson氏。

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私たちリチウムテクノロジーは、お客様のブランドをネットでユーザーとつなげるための仕組みを提供しています。AT&Tやバージングループなどのお客様がいます。

私たちは本番環境をOpenStackでデプロイしており、ある日社内から、マイクロサービスを展開できるように1カ月でしてくれと言われて、やりましょうと、育児休暇に入る前にDockerを入れてできるようにしました。

育児休暇から帰ってくると、これを本番環境にしてほしいと言われました。

そこでOpenStackのオーバーレイにKubernetesを入れて、1日未満でできるようにしました。ロギングなどのツールも入れて、モニタリングも可能にしました。

また、AmazonクラウドとOpenStackにまったく同じコンテナを展開しています。これはとてもパワフルなことです。

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OpenStackはデータセンター抽象化のコア

Yahoo! Japan、伊藤拓矢氏が登壇。

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Yahoo! JapanのOpenStackでは、同時稼働中のインスタンスは5万を超え、20ペタバイトのデータストレージ、20以上のクラスタを運用しています。

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1年前の稼働インスタンスは2万5000だったのが、現在は5万以上になっています。

私どもは、地震や津波、噴火、豪雨などの緊急情報を人々に提供するミッションクリティカルなアプリケーションを運用しています。緊急の時には、こうした情報を得るためにトラフィックがスパイクします。

日本ではOpenStackが本当に企業で使えるのか、という議論がありますが、アプリケーションの実装次第で十分可能だと考えています。

また、APIはによってデータセンターの抽象化が可能です。これによってハードウェアに明確なライフサイクルを設定でき、新しいハードウェアを使っていくことができます。

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OpenStackを採用する以前、IaaSを自分たちで開発し1万以上のインスタンスを稼働させていましたが、APIが独自のためオープンソースソフトウェアとの連係が難しいといった問題がありました。

OpenStackを採用したことでオープンソースとの親和性も高まっています。

私たちは進化していくデータセンターを使いたいと考えていて、そのためにデータセンターのライフサイクルマネジメントというものがあります。そしてOpenStackによって共通のAPIが使えることで、データセンターを丸ごと抽象化できるため、物理的な違いを意識することなく、適切な環境を適切なタイミングで使えます。

OpenStack Superuser AwardにNTTグループ

続いてSuperuser Awardの発表です。プレゼンターは前回のバンクーバーでSuperuser Awardを受賞したComcastのMark Muehl氏、Shilla Saebi氏。

賞は選考委員によってOpenStackの価値ある導入やコミュニティへの貢献などの観点でファイナリストが選ばれ、コミュニティの投票を経て決定されます。

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ファイナリストは「Fico」「GoDaddy」「Lithium Technology」「NTTグループ」。

受賞は、NTTグループ!

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≫後編に続きます

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Junichi Niino(jniino)
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