プライベートクラウドを構築した大手国内企業、その理由と利点を語る

2010年2月18日

企業が社内でクラウドを保有する「プライベートクラウド」。スケールメリットのあるパブリッククラウドと比べて、企業がクラウドを保有することは果たして適切なことなのかどうか、と疑問を呈す声は多くあります。

実際にプライベートクラウドを保有している企業は、そのメリットをどのように感じているのでしょうか? 国内で大規模なシステムをプライベート化している企業として、金融大手の大和証券と製造業大手のオリンパス、それぞれの情報システム部門の責任者二人がパネルディスカッションを行いました。

二人の意見に共通したのは、インフラを標準化していくことのメリット。ガバナンスがきくようになり、リソースの転用も容易になり、さらに異業種間での交流も活発化するといいます。この記事ではそうした二人の発言を中心にディスカッションの内容をまとめました。

パネルディスカッションが行われたのは、2月16日、17日に日経BPが主催したイベント「エンタープライズ・クラウド・フォーラム」。司会は日経コンピュータ副編集長の中村建助氏です。

fig (左)日経コンピュータ 副編集長 中村建助氏、(右から2人目)大和証券 常務取締役 管理副本部長 鈴木孝一氏、(右から1人目)オリンパス コーポレートセンター IT統括本部 本部長 北村正仁氏

―― まず、プライベートクラウドやクラウドをどう理解していますか?

北村 弊社の場合は「プライベートクラウド」とはいわず「社内クラウド」と明確に言っています。これは社内にデータセンターを置いて、そこに資源を集中するということ。パブリッククラウドを否定するつもりはないし、弊社も一部で使っていますが、クラウドコンピューティングは雲をつかむような話なので、しっかりと目的なりを意識しなければいけないと思います。

鈴木 システムにかかるコストを分析すると、導入や障害対応にかかる時間が非常に大きい。それに比べてシステムの利用率が高いかといえばそうでもない。それをなんとかしなければと、サーバの機種も、ソフトウェアのバージョンも標準化していき、さらにディスク装置の故障でサーバがシステムダウンするのであれば、ディスク装置をサーバの外に出さなくては、とシステムの改善を進め、2005年にはブレードを導入するに至りました。

そして振り返ってみると、それがいま「クラウド」と呼ばれるようなものになった、ということです。

結果からすると標準化が進み、異業種でも同じインフラ間で融通がきくよねとブレードを貸しあったりと、ここ1~2年そういう状況になってきました。

―― 企業内ではシステムが増えてサイロ化していき、それを情報システム部門がうまく管理できてないという悩みがあるようです。ITリソースの集中や標準化で具体的にはどういうメリットがあるのでしょうか。

北村 社内のデータセンターを昨年4月に稼働開始しました。データセンターを作ったときにいちばん考えたのが、社内の標準化、もっといえばガバナンスです。

エンドユーザー・コンピューティングは、ユーザー一人一人の効率化から始まったもので、基本的にはボトムアップ型。そしてサーバの価格も下がって社内でも部門が買えるようになると、部門ごとにサーバが立って弊社でもわけが分からなくなってきました。

それを、ガバナンスをきかせるために社内の数百台あるサーバをデータセンターに集約しました。そして、それを仮想化して以前と同じように部門に見せました。こうすることで運用コストも下げられるし導入や展開のスピードも上がる。標準化はそのために必要なものです。しかも、これまではシステム個別にサービスレベルを考えてきましたが、サービスレベルを社内で5パターンに決めて、それを選ぶようにした。

するとユーザーはサーバの面倒を見なくて済むし、セキュリティは向上するし、いいことずくめです。

―― プライベートクラウドというのは結局企業の情報システムをどのように変えていくのでしょうか。もちろん、いろんなところに影響を及ぼすと思いますが、自由な意見を聞かせていただければと思います。

鈴木 システムの標準化が進むと、異業種間交流などができるようになる点がとてもいいことだと思っています。リソースの融通とか、お互いの無理や無駄を埋め合わせていけます。それに各社ともおかかえの業者がいたりしますが、交流が進めばこうした業者の流動化が一気に進むかもしれません。

私は社内の標準化を進めている中でいろんな業種の人と話していますが、業種を超えて話の違和感がなくなってきているなと感じています。バックオフィス部門や事務部門に共通するものは非常に多く、例えば自分のところで不足している人材を(異業種の会社と)融通するのにも標準化は非常に大事で、そういうのを少しずつ推進しようとしている。

(人材の融通のような)そういったことできるの? と思われるかもしれませんが、標準化の進む先にはそういうものがあって、逆に標準化しないとその企業は孤立してしまうことになります。そういったことを考えています。

北村 いまの鈴木さんのお話、とても面白いし今後ぜひ交流させていただきたいなと思います。

クラウドの登場は、IT部門からみるとシステムのイニシャルコストが非常に下がってきているということ。いままでは「予算がありません」と言ってできなかったことが、これからはアイデアがあればなんでもできるようになります。

すると情報システム部門は、経営や事業にたいして価値を生んでいかないと社内にいる意味がなくなります。これは裏返せば情報システム部門が経営の一翼をになうチャンスだし、それをやっていかなければなりません。そういったことを情報システム部門ができるかどうかが、個別の企業の業績にも大きく影響してくると思います。

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タグ : クラウド , システム運用



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