Extensible Web、WebAssembly、ORTCなど、なぜいまWeb標準は低レイヤへ向かうのか

2015年8月27日

いま議論されているWeb標準が、これまでのWeb標準よりも低レイヤで策定される方向で議論されています。例えば、「Extensible Web」では、いままでのHTML5などのAPIよりも低レイヤなAPIを定義することで、もっと柔軟かつ自由にWebブラウザの動作や機能をプログラマやWebデザイナが作り出せるようになることを目指しています。

JavaScriptの分野では、主要なWebブラウザベンダが、どのWebブラウザでも高速に実行できるバイナリフォーマット「WebAssembly」の策定を進めています。これによってWebAssemblyをバイナリコードとして生成する言語であれば、JavaScriptに限らずWebブラウザで実行できるようになると見られています。

WebブラウザでSkypeのような動画と音声によるリアルタイムコミュニケーションを実現するWeb標準の「WebRTC」は、次世代仕様としてさらに低レイヤで機能を定義する「ORTC」の議論が始まっています。

なぜこのように、主なWeb標準が低レイヤへ向かっているのでしょうか?

ユースケースは時代とともに変わっていく

8月25日に都内で行われたイベント「Leading the way to W3C TPAC 2015」は、今年10月にW3Cの主要な議論の場である「W3C Technical Plenary / Advisory Committee Meetings Week(TPAC)」という会合が札幌で開催されるのに先だって、TPACを見据えたWeb標準技術について議論しようというイベントでした。

Web標準の動向に詳しい矢倉眞隆氏は、「W3Cの歩き方」というセッションで標準の動向について解説。「これからは『道具としてのWeb標準』に向かいつつある。W3CもJavaScriptもそういう方向に向かいつつあるのではないか」と指摘しました。

例えば、これまでHTMLなどはタグを書けば入力フィールドが表れるといった、非常に使いやすいものでした。

しかしいまやWeb技術はさまざまな場面で使われるようになり、かならずしも想定されたユースケースにはまる使われ方だけではなくなってきています。さまざまな要望に仕様が応えられるようにするには、Web標準はプログラマが開発するときに使われる道具のようなものになっていくのではないかというのが矢倉氏の説明です。

「HTML5 関連の API の現状とこれから」というセッションに登壇した羽田野太巳氏も同様の指摘をしました。

羽田野氏は、いままでユースケースをベースに策定されてきたWeb標準だが、ユースケースは時代とともに変わっていくため、最初から仕様は低レベルにしておいて、開発者が自由に上位レイヤを作れるようにすれば良いという考え方に変わってきていると説明しています。

Web標準の低レイヤ化はすんなりとはいかないだろう

ただし低レイヤ化にも一定の歯止めはあるだろうというのが、「最新Web 通信系API総まくり!WebRTC, Streams, Push api etc. 」のセッションに登壇した小松健作氏。

例に出したのは、AirPlayやChromecastのように、Webブラウザの画像をテレビなどのセカンドスクリーンに投影するためのWeb標準「Presentation API」。Presentation APIでは、ネットワーク内にあるスクリーンデバイスの情報をすべてAPIでリストアップできてしまうとプライバシーの問題につながりかねないとして、スクリーンデバイスを探索してリストアップし、人間が選択するところまではデバイス内で行い、選択後のスクリーンデバイスのみをAPIで取得できるようにする、といった議論があると説明。プライバシーなどへの対処のため、低レベル化にも一定の歯止めはあるだろうとの認識を示しました。

最後のセッションとして新野がモデレータを行ったパネルディスカッション「Web技術はどこに向かっているのか?」でも、ユースケースが広がり、Web技術へのニーズがWebブラウザにとどまらず、スマートフォンや家電、自動車や組み込み機器などへ広がっていく中で、Web標準がこれらに対応するため、低レイヤでの仕様策定が進むだろうとの認識で登壇者がほぼ一致。

と同時に、この傾向はデベロッパーにとって今後のWeb開発を複雑なものにしていくのではないか、という点でも一致しました。

一方で「W3Cなどではこの方向ですんなり議論がまとまり、低レベルでの仕様策定が進んでいくのか?」との問いに、矢倉氏は、まだ高レベルで使い勝手のいいWeb標準を望む人たちも一定数いるため、すんなりとはいかないだろう、という認識を示しました。

参考:"Leading the way to TPAC 2015" #waytotpac のまとめ - togetter

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タグ : W3C , Web標準



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