Software-Defined Networkに関してガートナーが言っていること。「ビジネスのアジリティを提供する」「ネットワーク仮想化と同一視するべきではない」

2013年3月28日

米調査会社のガートナーがSoftware-Defined Networkに関する発表を最近になって2本、公開しています。そろそろSoftware-Defined Networkとは何かという議論から、具体的に何ができてどんなメリットやデメリットがあるのか、といった議論へと進もうとしている中で、参考になりそうな記述をいくつか引用します。

Ending the Confusion About Software-Defined Networking: A Taxonomy | 2367616

SDNはビジネスのアジリティを提供する

1つ目は3月12日に公開された「Ending the Confusion About Software-Defined Networking: A Taxonomy」(Software-Defined Networkについての混乱を終わらせよう)という文書。

ちなみにガートナーはSoftware-Defined Networking(以下SDN)と、最後にingを入れることで用語を統一しているようです。まず、ガートナーらしい簡潔なSDNのまとめをこう記述しています。

Software-defined networking (SDN) is a new approach to designing, building and operating networks that focuses on delivering business agility while lowering capital and operational costs.

SDNはネットワークの設計、構築、運用に関する新しいアプローチで、投資と運用のコストを下げつつビジネスのアジリティを提供することにフォーカスしている

技術的なSDNの定義は、あとで紹介する2本目の文書中において、「コントロールプレーンとデータプレーンを分離して、集中管理する」という特徴を指摘しており、一般的なSDNの定義と変わりません。上記ではSDNがビジネスのアジリティを提供するという点にガートナーの視点がうかがえます。

また、技術的な視点からのSDNがもたらす変化は、次のように書いています。

SDN represents a shift from (per box) element-based control to network-based control.

SDNは、ネットワークを(筐体ごとの)要素ベースのコントロールから、ネットワークベースのコントロールへのシフトを体現している。

SDNが引き起こす変化を俯瞰してみると、たしかにそう言えそうです。だからこそ、このネットワーク全体を管理するソフトウェアの主導権をどこが握るのか、ネットワークベンダーから仮想化ソフトベンダ-、管理ツールベンダー、そしてクラウド基盤ソフトウェアなどさまざまなプレイヤーがいままさに覇を競おうとしているところです。

さて、ネットワーク仮想化とSDNの関係は混乱しがちな点だと思われますが、ガートナーは次のように説明しています。

While some vendors equate SDN with network virtualization, network virtualization is simply one of the applications supported by SDN. Limiting the discussion of SDN to network virtualization limits the value that can be achieved and may steer you toward an inappropriate choice.

いくつかのベンダはSDNとネットワーク仮想化を同じものとしているが、ネットワーク仮想化は単にSDNがサポートするアプリケーションの1つだ。SDNの議論をネットワーク仮想化に狭めておくのは、その価値を制限してしまうとともに、不適切な選択にも向かいかねない。

ネットワーク仮想化がSDNのアプリケーションの1つだという説明は、一昨年の記事でPublickeyでもそう説明していたので、ガートナーと見解が一致していて少しほっとしています。

既存のネットワーク技術者には脅威

もう1つのガートナーの発表は、「Software Defined Networking Creates a New Approach to Delivering Business Agility」(SDNはビジネスアジリティを提供する新しいアプローチを築く)です。こちらもタイトルでSDNとビジネスアジリティを結びつけていますね。

この発表では、具体的にSDNがアジリティにどう効くのか、次のような例で説明しています。

In a data center context, SDN is a component of the Policy Driven Data Center. It provides the programmable connectivity required to link the network to other components within the data center delivering a more integrated, functional system. For example, a provisioning application could specify that an instance of the CRM application must have certain services delivered in a specific sequence and would ensure that the traffic flows through the appropriate devices in the correct sequence.

データセンターの文脈では、SDNはポリシードリブンなデータセンターのコンポーネントだ。データセンターの中でネットワークへの接続を要求するコンポーネントとの接続をプログラマブルな形で提供し、より統合され機能的なシステムを提供する。

例えば、プロビジョニングアプリケーションは、CRMアプリケーションのインスタンスが特定のシーケンスにおいて確実なサービスを提供するために、適切なトラフィックの流れを確実にする、といったことを指定できるだろう。

ポリシードリブンなデータセンター、つまりビジネスの要求に沿って運営されるデータセンターの要素として、SDNが機能する。それゆえビジネスアジリティが実現されるのだ、という理解です。

いまVMwareなどがソフトウェアで定義されるデータセンター、Software-Defined Datacenterという考え方を提唱し、多くの企業がその実現に向かっていますが、ポリシーベースのデータセンターとは、そのソフトウェアで定義されるデータセンターの先にあるものといえるでしょう。

ただし、既存のネットワーク技術者にとってSDNは脅威になるかもしれない、とも警告しています。

The adoption of SDN requires a new way of thinking that may threaten existing network engineers.

SDNの採用はネットワークの再考を求めるため、既存のネットワーク技術者には脅威になるかもしれない。

SDNへの移行チームのメンバー選出には、スキルやビジョンなどに気を配った方がいい、と忠告しています。

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Junichi Niino(jniino)
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