「マイクロソフトはオープンなWebの推進者となる、IBMがLinuxでそうだったように」、オライリー氏の意味深な予言

2009年11月20日

IT系出版社オライリーメディアの創立者であり、Web 2.0の提唱者としても知られるティム・オライリー氏が、次のようなもったいぶった予言をブログにさりげなくにポストしたのは、今週の月曜日、11月16日のことでした。

The War For the Web - O'Reilly Radar

P.S. One prediction: Microsoft will emerge as a champion of the open web platform, supporting interoperable web services from many independent players, much as IBM emerged as the leading enterprise backer of Linux.

追伸、1つ予言をしておく。マイクロソフトは、多くのWebサービスにまたがる相互運用性をサポートする、オープンなWebプラットフォームの推進者として頭角を現すだろう。IBMがLinuxを企業に向けて推進したときのように。

そしてこの予言に続き「この話はWeb 2.0 Expoのキーノートで話そう」と書いてありました。

オライリー氏のマイクロソフトに関する予言

今週の火曜日にニューヨークで行われた、その「Web 2.0 Expo」でオライリー氏がどのような話をしたのか、eWEEKが記事「Why Tim O'Reilly Sees Microsoft as a Proponent of the Open Web」で伝えています。

O'Reilly said Microsoft's recent deals to index Twitter tweets and draw on Wolfram Alpha's APIs for computational data show a shift in its willingness to work with other Web companies.

オライリー氏は、マイクロソフトがツイッターのつぶやきを(Bingで)検索インデックスに含めたことや、(質問に対して検索結果ではなく、回答を表示してくれる検索エンジン)Wolfram Alphaを利用することについて、さまざまなWeb企業と連係しようとする同社の意志の転換を示すものだとした。

eWEEKはオライリー氏のこの言葉に続けて、Windows AzureではMySQLやPHPといったオープンソースがサポートされること、そして現在ロサンゼルスで開催中のマイクロソフトのイベント「PDC09」のキーノートスピーチに、WordPressの創始者でありオープンソースの強力な推進者でもあるMatt Mullenweg氏が登壇したことなどを挙げ、マイクロソフトがオープンなWebを支持するだろうというオライリー氏の予言を補強しています。

予言の背後にあるもの、Web 2.0

なぜオライリー氏はこのような予言をしたのでしょうか? そのヒントは彼が予言を書いたブログのエントリ「The War For the Web」にあります。

長文のこのエントリで、オライリー氏はWeb 2.0の持つ独占の力について心配しています。

オライリー氏はネットの将来について「1つの指輪がすべてを統べる世界」か「小さきものがゆるくつながった世界」のいずれかになると予言しており、前者はマイクロソフトがPCの世界で実現したことであり、後者は現在のインターネットの姿だとしました。

しかしそのインターネットの姿を、Web 2.0のネットワーク効果が破壊する可能性がある、と指摘します。

Web 2.0では、多くの人に使われたシステムがさらに力を増す構造になっており、それゆえに独占の力が働きやすいためです。

And so we've grown used to a world with one dominant search engine, one dominant online encyclopedia, one dominant online retailer, one dominant auction site, one dominant online classified site, and we've been readying ourselves for one dominant social network.

だからわれわれは、サーチエンジンの独占を作り上げ、オンライン百科事典の独占を作り上げ、オンライン小売りの独占を作り上げ、クラシファイド広告の独占を作り上げ、そしていまわれわれ自身でソーシャルネットワークの独占を作り上げようとしている(注:暗にFacebookのことを指している)

Web 2.0の提唱者であるオライリー氏は、この独占の力がネットを覆うことを心配し、警告しているのです。

And it's time for developers to take a stand. If you don't want a repeat of the PC era, place your bets now on open systems. Don't wait till it's too late.

デベロッパーたちよ、立ち上がるときは来た。もしもPCの時代に起きたことを繰り返したくないのなら、オープンシステムに賭けるべきだ。手遅れになる前に。

Webエコノミーにおける正しいビジネスのやり方

オライリー氏の予言は、マイクロソフトがオープンソース派に転向するとか、.NETやC#のようなプロプライエタリな技術を捨てるといったことを示しているのではありません。

ネットワーク効果を使ってより独占を強めようとしているWebのサービスに対抗するには、APIやデータの公開による相互運用性が必要であり、それをマイクロソフトは支持し推し進めていくだろう、ということです。

eWEEKの記事の後半には、なぜマイクロソフトがオープンWeb戦略をとると予言しているのか、オライリー氏自身がその理由を語っています。

"Don't do it just because you're the underdog," O'Reilly said, pointing to IBM's embrace of Linux to battle Microsoft and Google's launch of OpenSocial to contest Facebook as other examples of such defensive jabs. Do it, he said, because it's the right way to do business in the Web economy.

負け犬だからそうするわけではない。IBMがマイクロソフトと戦うためにLinuxを擁したように、グーグルがFacebookと戦うためにOpenSocialを立ち上げたように、そうすることは、それがWebエコノミーにおける正しいビジネスのやり方だからなのだ。

マイクロソフトはWebでの戦い方を身につけている、オライリー氏はそう考えたためにこの予言をしたといえます。と同時に、そこには独占を強める存在に対してカウンターとなる存在が登場してほしいというマイクロソフトへの呼びかけ、そしてオライリー氏自身の願望が含まれているのではないでしょうか。

追記:Web 2.0 Expoでのティム・オライリー氏のキーノートが公開されていました

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タグ : Facebook , Google , IBM , Microsoft , Web標準



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