総務省と経済産業省で行われているクラウドの研究会、目的は?

2009年8月5日

クラウドコンピューティングがIT業界だけでなく産業全体において重要さを増してきた昨今、日本では総務省と経済産業省で、それぞれ識者を集めた研究会、検討会が行われています

研究会、検討会の内容はどんなものなのでしょうか? 公開されている資料を見てみることにしましょう。

総務省「我が国経済全体の発展を実現する」

総務省|クラウドコンピューティング時代のデータセンタ活性化策に関する検討会|会議資料・開催案内等

総務省で行われているのは「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会」です。

開催に関する報道発表(平成21年5月8日)では、この検討会の目的が次のように紹介されています(太字は新野による)。

総務省では、日本をアジアの情報発信拠点とすることにより、電気通信事業の発展や新規サービスの創出を図り、利用者利便の向上、我が国経済全体の発展を実現する方策の検討を行うため、「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会」を開催します。

構成員名簿から主な組織名を抜き出すと、富士通、日立、日本電気、NTTコミュニケーションズ、KDDI、ソフトバンクテレコム、野村総研、マイクロソフト、ライブドア、ビットアイル、グーグル、ヤフー、東京大学、慶應義塾大学、早稲田大学といったところです。

第1回検討会で配布された資料「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会 開催要綱(案)」から、この検討会で検討する内容は以下のようになっています。

検討会は、以下の事項について検討する。
(1) 国内データセンターの利用促進方策
 ① 立地に係る環境整備
 ② 業務運営の円滑化
 ③ 利用者の選択が容易な環境の整備

(2) 国内向けサービスの活性化方策
 ① 利用者に安心感を与える環境の整備
 ② 新たなサービスが創生される環境の整備

資料「検討の背景」によると、「我が国の通信産業発展のためには、日本国内向けのインターネット上のサービスが日本国内から、すなわち、国内のデータセンターから提供されることが、極めて重要」であり、「更には、他国向けサービスが日本国内から提供されることは、極めて有益」であるため、以下が具体的検討課題であると挙げられています。

また、「利用者に、得られる便益だけではなく、利用にあたって留意すべき事項など、サービスの提供条件をより分かり易く伝えることが極めて重要であり」「同時に、サービス提供者が、サービス提供に際し生じる負荷について、予見可能性を高めることが極めて有益と考えられる」ことから、以下も検討課題として挙げられています。

まとめると総務省では「いかにクラウドのデータセンターを国内で実現するか」「(海外で運営されている)クラウドの利用者をいかに守るか」が検討課題となっているようです。構成員が国内企業中心なのも、それを反映しているのかもしれません。

そのためにどんな議論がされているのかといえば、議事録を見る限り、いまのところ各社のサービス、例えばNTTコミュニケーションズのデータセンターの紹介、Windows Azureの紹介、ライブドアのクラウドへの取り組みなど、参加各社相互の情報交換が中心のようです。

経済産業省「我が国の技術等の強みを活かしたクラウドの実現に」

クラウド・コンピューティングと日本の競争力に関する研究会(第1回)-配付資料(METI/経済産業省)

経済産業省 商務情報政策局では「クラウド・コンピューティングと日本の競争力に関する研究会」を行っています。

第1回で配布された資料「資料1 クラウド・コンピューティングと日本の競争力に関する研究会の開催について(PDF形式:127KB)」から、目的に当たる部分を引用します。

研究会では、クラウド・コンピューティングに関する世界の潮流を見定め、その進化・発展のための諸課題・論点を整理・検討するとともに、我が国のIT分野における技術等の強みを活かしたクラウド・コンピューティング基盤の実現に向けて国、ユーザー、提供者(データセンター、ITベンダー等)のそれぞれが取り組むべき課題をとりまとめることを目的とし、第一線で活躍している有識者が結集して検討を行う。

こちらの構成員としては、委員長が慶應義塾大学の村井純教授。主な参加組織は、富士通、日本IBM、日本ユニシス、日立、NEC、NTT、サン・マイクロシステムズ、マイクロソフト、セールスフォース・ドットコム、アマゾンジャパン、NTTデータ、鹿島建設、トヨタ自動車、東京大学、といったところ。

この研究会での検討事項は、前述の「資料1」に記述されています。まとめると以下の3つになります。

これらの検討事項を具体的にしてまとめると、経済産業省の研究会では、クラウドを利用するにあたってのサービス選択の際の判断基準の策定、海外のデータセンターにデータを置く場合の機密性確保のためのガイドラインの充実、特定のクラウドへのロックイン回避のため相互運用性確保のための標準化、そして競争力強化のための技術開発支援、となるようです。

こちらはクラウド用データセンターの国内誘致も含んではいますが、たとえ国外のクラウドであってもそれをどう活用していくか、国内の競争力強化や競争ルールの明確化といったものに力点が置かれているように思います。

議論はこれから行われる予定になっています。

研究予算も8億円

これ以外にも、以前の記事「クラウドに付加価値を与える「クラウドブローカー」の登場をガートナーが予想、総務省ではクラウド連携に8億の研究予算」でも紹介したように、総務省ではクラウド連係の技術開発のために8億円の予算を組み、また産学官連係の「グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム(GICTF)」を発足させるなどの動きがあります。

グローバルなメジャープレイヤーは数社になる

以前、サン・マイクロシステムズのCTO、グレッグ・パパドポラス(Greg Papadopoulos)氏は「世界にコンピュータは5つあれば足りる」という予言をしました。大規模なクラウドが少数あって、あとはみんなでそれを利用するだけ、という世界が来るのではないかという予言です。

上記の記事で触れられているように、例えば電力、航空機、テレコムなど、産業として大きなものでもメジャープレイヤーは世界でわずか数社しかいません。それと同じ状況が、クラウドの登場を引き金にIT産業でも起こりうる可能性が高まっています。

そのメジャープレイヤーを国内で育成する、もしくはデータセンターを国内で稼働させるか、という議論はIT産業育成にとって重要なことだと思いますが、同時に産業全体で見た場合にはグローバルで競争している海外のクラウドをいかに安全で有利に活用するか、という視点も抜けてはならないと思います。

いまのところ各省庁ともに、力点の置き方は異なっていても、検討課題にはこの両面が含まれているようです。今後も上記の視点を持って議論を見守っていきたいと思います。

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タグ : IT業界動向 , クラウド



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