クラウドに付加価値を与える「クラウドブローカー」の登場をガートナーが予想、総務省ではクラウド連携に8億の研究予算

2009年7月29日

Gartner Says Cloud Consumers Need Brokerages to Unlock the Potential of Cloud Services

米調査会社のガートナーは、クラウドサービスに付加価値を与えてユーザーに提供する「クラウドサービスブローカー」が登場するだろうという予想を、7月9日に発表したプレスリリースで発表しています。

冒頭の部分を引用しつつ紹介しましょう。

As cloud computing evolves, combinations of cloud services will be too complex and untrustworthy for end consumers to handle their integration,

クラウドが発展していくなかで、それらを組み合わせることはエンドユーザにとって非常に複雑で分かりにくいものになっています。

Gartner predicts that as cloud services are adopted, the ability to govern their use, performance and delivery will be provided by cloud service brokerages. These brokerages will use several types of brokers and platforms to enhance service delivery, and, ultimately, service value.

ガートナーでは、クラウドを業務に適用する際の、クラウドの利用、性能、そして提供などの管理がクラウドサービスブローカーによって行われると予想します。ブローカーは、提供されるサービスの拡張や、究極的にはサービスの価値の拡張をするために、いくつかのプラットフォームの仲介を行うことになるでしょう。

ガートナーのバイスプレジデントでフェローのDaryl Plummer氏は、クラウドが提供するサービスをSOA的に利用していくとサービスが分散していくことは避けられず、それらを組み合わせて適切に動作させるためには難しい仕事となることが、クラウドサービスブローカーの登場する背景になると説明しています。

そして、クラウドサービスブローカーの仕事は、以下の3つに分類されるだろうとしています。

1. Cloud Service Intermediation(クラウドサービスの仲介)
クラウド(場合によっては複数のクラウド)の上にサービスを構築して利用者に提供する。その際に、ID管理やアクセス管理といった管理も行う。

2. Aggregation(クラウドサービスの統合)
複数のクラウドのサービスを統合して提供する。その際に、データの統合やプロセスの統合などを行う。

3. Cloud Service Arbitrage(クラウドサービスの調停/抽象化)
クラウドサービスの調停/抽象化はクラウドサービスの統合と似ているが、クラウドサービスの統合が、統合されるクラウドサービスが変化しないことを想定しているのに対し、クラウドサービスの調停はつねに顧客が柔軟にクラウドサービスを変更できるようなサービスを提供する。例えば、メールサービスを比較してより条件がよいところがあれば乗り換える、など。
(追記:「調停よりも抽象化の方が分かりやすいのではないか、という指摘があり、超訳ではありますがたしかに分かりやすいので、「調停」を「調停/抽象化」に変更しました。2009/8/13)

こうした機能を実現するには、クラウドについての知識はもちろんのこと、サービスを実現するためのツール構築やカスタマイズ、そして顧客との対話能力が必要でしょう。クラウドでもやはりSIerの出番はあるのだ、と思わせる予想です。

総務省の「クラウドサービス連携技術」予算8億円を投入

実はガートナーが予想するまでもなく、複数のクラウドを用いたシステム構築を柔軟に実現することを目指した動きは、国内ですでに始まっています。

総務省が4月27日に発表した「平成21年度 情報通信技術の研究開発に係る提案の公募(第2回)」では、「セキュアクラウドネットワーキング技術の研究開発」の項目の中に「クラウドサービス連携技術」が含まれており、この研究開発のために8億円程度の予算が組まれています。

この研究開発を受託したのは日本電信電話、代表研究責任者は同社情報流通プラットフォーム研究所長の後藤厚宏氏です。

グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム

そして7月17日には、クラウドサービス同士を連携させるために必要な標準技術の確立を目指す団体「[グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム(GICTF)]」が設立総会を開催しました(参考:クラウド間の連携を目指す産官学フォーラムが発足,電子政府などへの適用目指す - ニュース:ITpro)。

この団体には総務省がオブザーバとしてついており、会長は慶應義塾大学 青山友紀教授、副会長には先ほど登場した日本電信電話の後藤厚宏氏。そして幹事には富士通、NEC、日立、KDDI、東芝、東京大学、NTTデータなど、そうそうたる企業名が並んでいます。

設立趣意書には、次のような一文があります。

現状のクラウドシステムは、電子行政、医療・金融など、ミッションクリティカルな分野へ適用するには、信頼性や即応性、データの品質やセキュリティ面などの観点から十分とは言えず、これら分野の要求条件に対応する高い信頼性と品質の担保のためには、ブロードバンドネットワークで結ばれた複数のクラウドシステム間で連携し、相互補完できる仕組みが必要不可欠である。

つまり産官学で、お金と人材を投入して、クラウドに付加価値を実現する技術とノウハウを蓄積しようという動きが早くも始まっていると見ていいでしょう。

いまだに行政による産業政策と日本電信電話を頂点としたピラミッド構造なのか......という愚痴はおいておいて、少なくとも日本にもこういう先を見た動きがあることは喜ばしいことではあります。

ガートナーがまとめてくれたように、クラウドの時代になってもシステムを構築し、付加価値を創造するビジネスは存在し続けます。国内ではそのための行動も始まっています。今後、その動きがもっとスピーディになり、大企業だけでなく、多くのSIer、ベンチャー企業にも広くその成果がいき渡るような政策が実行されるような動きを期待しつつ、動向を注視し続けていこうと思います(逆に行政には関わってほしくない、という方も多いかもしれませんが......)。

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